外の熱を伝えにくくする断熱
外の熱が室内へ伝わることを抑え、エアコンで整えた室温を保ちやすくします。ただし、空気中の水蒸気を取り除くには冷房や除湿も必要です。
高温多湿化する夏と、これからの家づくり
「以前よりも、夏の蒸し暑さが厳しくなった」
近年、そう感じている方も多いのではないでしょうか。
関東各地で厳しい暑さが続くなか、これからの住まいを考えるうえでは、最高気温だけでなく、空気中にどのくらいの水蒸気が含まれているかにも目を向ける必要があります。
佐藤ホームでは2025年8月、鴻巣市にあるOB様邸の屋外と室内で温度と湿度を継続して測定しました。屋外の水蒸気量は、2015年8月の沖縄・那覇に迫る水準でした。
これは鴻巣市の一地点における実測事例ですが、近隣の熊谷の気象データとあわせて、関東内陸部の夏の高温多湿化を考える一つの材料になります。
一方、室内では8畳用のエアコン1台で家全体を冷やし、除湿機1台と24時間換気を使用しながら、温度と湿度が比較的安定していました。
今回は、鴻巣市の実測データをもとに、一般的な「湿度○%」だけでは分かりにくい空気中の水分量を、絶対湿度から考えます。
天気予報や温湿度計に表示される「湿度70%」は、一般的に相対湿度を指します。
相対湿度は、その温度の空気が含むことのできる最大の水蒸気量に対して、実際にどのくらい含まれているかを割合で表したものです。コップに例えて考えてみましょう。
気温20℃を小さなコップ、30℃を大きなコップとします。どちらも70%まで水が入っていれば相対湿度は同じ70%ですが、大きなコップの方が実際の水の量は多くなります。
空気も同じで、同じ相対湿度でも気温が高いほど多くの水蒸気を含みます。そこで参考になるのが、空気1m³に含まれる水蒸気の重さを表す「絶対湿度」です。
※この記事では、空気1m³に含まれる水蒸気量を「絶対湿度」と表記します。より正確には「容積絶対湿度」と呼ばれる指標です。
佐藤ホームでは、2025年8月1日から31日まで、鴻巣市にあるOB様邸の屋外で温度と湿度を測定しました。
ほぼ1分間隔で記録された屋外実測データを平均すると、次の結果になりました。
では、平均絶対湿度約21.8g/m³という数値は、どのくらい高いのでしょうか。
比較したのは、10年前にあたる2015年8月の沖縄・那覇です。
気象庁の観測データによると、2015年8月の那覇は、月平均気温28.7℃、月平均相対湿度79%でした。
気象庁の観測値をもとに、空気1m³に含まれる水蒸気量へ換算すると、絶対湿度は約22.3g/m³となります。
鴻巣市は那覇より約0.5g/m³低いものの、その差はわずかです。
埼玉県の内陸部である鴻巣市でも、2025年の夏は、10年前の沖縄に迫るほど多くの水蒸気を含んだ空気になっていたことが分かります。
最近の夏は、単に気温が高くなっているだけではありません。住まいが処理しなければならない湿気の量も、非常に多くなっています。
※本記事では、沖縄の代表地点として那覇の観測データを使用しています。
※鴻巣市はOB様邸の屋外に設置した測定機器による実測値、那覇は気象庁の観測値をもとに算出した参考値です。測定機器や設置環境、集計方法が異なるため、完全に同じ条件での比較ではありません。
参考として、鴻巣市に近い気象観測地点である熊谷市のデータも確認しました。気象庁の観測値をもとに換算すると、平均絶対湿度は2015年8月の約18.4g/m³に対し、2025年8月は約20.9g/m³で、約2.5g/m³の差がありました。
2.5g/m³と聞くと小さな差に感じるかもしれませんが、どちらも気温30℃として相対湿度に換算すると、約61%と約69%の違いに相当します。
この2年の比較だけで今後を予測することはできませんが、20年、30年先の夏を考えると、今の気候だけを基準に家づくりをしてよいのか、考えさせられる結果です。
※相対湿度は、違いを分かりやすくするため、どちらも気温30℃として換算しています。熊谷市の絶対湿度は、気象庁の月平均気温と月平均蒸気圧をもとにした参考値です。
絶対湿度21.8g/m³の空気には、100m³当たり約2.18kgの水蒸気が含まれています。
住宅では24時間換気によって外気を取り入れるため、外の水蒸気量が増えるほど、エアコンや除湿機が処理する湿気も多くなります。
これからの夏の住まいでは、室温を下げるだけでなく、外から入る水蒸気をどのように管理するかまで考える必要があります。
では、屋外の平均絶対湿度が約21.8g/m³だった同じ期間に、OB様邸の室内はどのような環境だったのでしょうか。
屋外の平均絶対湿度が約21.8g/m³だったのに対し、室内は約12.7g/m³でした。
また、2025年8月の室内は、温度24.4~27.0℃、相対湿度47~59%、絶対湿度10.7~14.7g/m³の範囲で推移していました。
屋外の温度や湿度が変化するなかでも、室内では温度だけでなく、空気中に含まれる水蒸気量も比較的安定していました。
こちらのOB様邸では、次の設備を使用しています。
エアコンで家全体を冷やし、除湿機で夏の湿気を整えながら、24時間換気も止めずに稼働させています。
高性能住宅の役割は、設備を使わずに暮らせるようにすることではありません。必要な設備を無理なく働かせ、整えた室内環境を保ちやすくすることにあります。
※室内環境は、建物の大きさや間取り、ご家族構成、料理、入浴、室内干し、設備の使用方法などによって異なります。今回の数値は、佐藤ホームで建てたOB様邸における実際の暮らしの一例です。
外の暑さが厳しくなるほど、外から伝わる熱を抑え、冷房でつくった涼しさを保つ断熱性能が重要になります。
ただし、断熱性能を高めれば室内の湿度も自動的に下がるわけではありません。高断熱住宅は少ない冷房能力でも室温が下がりやすい一方、設定温度に達してエアコンの運転が弱くなると、十分に除湿できない場合があります。
そのため、建物の性能に合ったエアコンの容量や配置、家全体への空気の流れ、除湿機や24時間換気との組み合わせまで考えることが大切です。
外の熱が室内へ伝わることを抑え、エアコンで整えた室温を保ちやすくします。ただし、空気中の水蒸気を取り除くには冷房や除湿も必要です。
給気口以外から高温多湿な外気が入ることを抑え、換気・冷房・除湿を計画どおりに働かせやすくします。
室内で発生する湿気や二酸化炭素、においを排出します。夏は換気で入る湿気を冷房や除湿で処理することも必要です。
エアコンや除湿機を適切に使い、室内に入った水蒸気を取り除きます。室温を下げすぎずに湿度を整える考え方も大切です。
軒や庇、外付けシェードなどで夏の日差しを遮り、冷房負荷を抑えて家全体の温湿度を安定させやすくします。
佐藤ホームでは、断熱性能だけを高めるのではなく、気密・換気・日射遮蔽・空調・自然素材を一つの仕組みとして考えています。
どれだけ性能の高い断熱材を使っても、建物に隙間が多ければ、そこから熱や湿気を含んだ外気が入り込みます。
そのため、すべての建物で工事中と完成時の2回、気密測定を行い、C値0.3以下であることを確認しています。
また、調湿性のある自然素材も、換気やエアコン、除湿機の代わりとして考えるのではなく、断熱・気密・換気・空調と組み合わせることで、その特徴を生かします。
今建てる家は、これから30年、50年と、家族の暮らしを支えるものです。
今後さらに暑さや湿気が厳しくなる可能性も考え、現在だけでなく、これからの気候にも対応しやすい住まいを計画することが大切です。
Q.高気密住宅は、湿気がこもりやすいのではありませんか?
気密性が高いこと自体が、湿気がこもる原因になるわけではありません。気密性能を確保することで、隙間から無計画に入る外気を抑え、給気口から取り入れ、排気口から排出する換気経路をつくりやすくなります。そのうえで、24時間換気と冷房・除湿を適切に行うことが大切です。
Q.夏は窓を開けた方が、湿度は下がりますか?
外気の絶対湿度が室内より低い場合は、窓を開けることで室内の湿気を外へ逃がせることがあります。一方、梅雨や真夏の高温多湿な日は、多くの水蒸気が室内へ入る場合があります。屋外と室内の温度・湿度を確認して判断することが大切です。
Q.漆喰やセルロースファイバーを使えば、除湿は不要ですか?
漆喰やセルロースファイバーなどの調湿性は、室内の湿度変化を緩やかにする助けになります。しかし、湿気を屋外へ排出する設備ではありません。室内の湿度は、ご家族の暮らし方や室内干しの量などによっても変わるため、自然素材だけに頼らず、24時間換気や冷房・除湿と組み合わせて考えることが大切です。
2025年8月に鴻巣市のOB様邸屋外で測定した平均絶対湿度は約21.8g/m³で、2015年8月の那覇約22.3g/m³との差はわずかでした。
一方、同じ期間の室内では、8畳用エアコン1台、除湿機1台、24時間換気を使用し、平均室温約25.7℃、平均相対湿度約53%、平均絶対湿度約12.7g/m³となっていました。
これからの住まいでは、次の5つを一体で考えることが重要です。
佐藤ホームでは、これから先の気候も見据えながら、夏涼しく冬暖かいだけでなく、湿度まで心地よい暮らしを目指しています。
温度と湿度による心地よさは、UA値やC値などの数値だけでは分かりにくい部分があります。高断熱・高気密の室内環境と、自然素材の心地よさをモデルハウスでご体感ください。